第1特集 保健婦にとって看護とは
臨床看護の立場から訪問看護を考える
川島 みどり
1
1東京看護学セミナー
pp.19-23
発行日 1972年6月10日
Published Date 1972/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662205095
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はじめに
看護の機能が,健康のあらゆるレベルの人々を対象に発揮されるものであることに,異議をはさむものではないが,ここでは,何らかの疾病にかかった状態の患者を対象とした看護を行なう者の立場から,訪問看護の必要性を考え,だれがその仕事を分担すべきか,また,どのような方法で訪問看護事業を進めるべきかについて考えてみたいと思う。
病院看護の経験しかもたない私にとって,看護といえば,まず臨床看護の発想が起こってくるのは止むをえないことかもしれない。総合看護だとか,継続看護というようなことがいわれても,保健所レベルで行なわれる保健婦業務の内容が"看護"というイメージにはどうしても結びつかないのである。保健婦は,同じ看護の分野で働く仲間としての連帯意識は多分にもちあわせているつもりである。しかし,保健所には,特有の予防行政上のプログラムがあり,そのプログラムに基づいて,行政の一端をになうお役人的存在の保健婦の印象をぬぐい去ることができない。それというのも,住民1万人に1人などという,途方もない人数を受け持つ保健婦と,1対1の臨床看護は全く無縁のような感じさえするのである。だからといって病院看護は,医療行政のひずみの影響を受けていないわけではなく,1人1人の看護婦の苦しみや,患者の不満をよそに,思わぬ方向に向って走る危険性をもっているのである。
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