特集 生活をゆたかに
文学をつくるということ
田宮 虎彦
pp.9-11
発行日 1961年1月10日
Published Date 1961/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202241
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◇野良着にまで浸みわたつた文学
短歌や俳句の結社は,どのくらいあるのだろうか.ずいぶんと多いに違いない.短歌をつくる友人がいて,ある結社の主宰者の作品をしきりにほめていた.私は,短歌にも俳句にもそれほど心をひかれない.それで,友人のほめた歌人のことももちろん知らなかったが,ある時,別の結社の主宰者である歌人にあつた時,ふと友人の言葉を思い出し,友人の推す歌人のことを聞いてみた.すると意外なことに,その歌人は,私のいつた歌人のことを少しも知らなかつた.
こんなことを書いたからといつて,私には,何も,歌壇論や歌人論をするつもりはない.私は,ただその時私の感じたこと,つまり,わが国の人人の間に短歌や俳句がいかに広く浸みわつているかということをいいたかつたのだ.その一つの例として,私は,このエピソードを書いたのだ.
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