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ナースと文学
長谷川 泉
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1医学書院出版部
pp.25-29
発行日 1954年4月15日
Published Date 1954/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909542
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1.ナースを扱つた文学
最近「アンナ」という映画が出て評判である。この映画の主人公はナースである。しかも畫は白衣をまとつた聖職にあり,夜は紅燈の巷に働くキヤバレーの女としての二重人格を持つた人物として描かれている。ジーキルとハイドとまではゆかないにしても,その二重人格に興味の焦点がそそがれていることは間違いない。しかもこのような二重人格の女を演ずる主演女優は,かつて「にがい米」で肉体女優として評判をとつたシルバーナ・マンガーノてある。ナースを扱つてはいるが,それは映画のヒロインの一つの粉飾にしか過ぎない。
文学作品においてもナースを扱つたものはある。たとえば川口松太郎の「愛染かつら」がそうである。最近問題になつたD・H・ロレンスの「チヤタレー夫人の戀人」がそうである。しかし,これらはいずれも真正面からナースを画いたものではない。いわば映画「アンナ」の中でナースが描かれたのと同じような扱いにしか過ぎない。
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