特別寄稿
お産と文学
興梠 忠夫
pp.44-48
発行日 1970年5月1日
Published Date 1970/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203931
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文学が人間の真実をえがくものである以上,お産という生命の誕生をとり扱ったものがあっていいはずですが,そのこと自体があまりにも平凡であり,日常的であるためか,古今東西の文学であまりみかけないようです.しかし,平凡であり,日常的であるからといって,そのなかにひそむ意味が,そのために価値の低いものであるとはいえないと思います.そこでこのお産を直線的に題材として取扱った短篇を紹介してみたいと思います.
その作品はロシヤの作家で,マキシム・ゴリキイ(1868-1937)の短篇「人間の誕生」です。この作品は,1911年の末に書かれたものです.ゴリキイはロシヤのトルストイやドストエフスキー,チエホフ,ゴーゴリなどとともに有名な作家で,ロシヤ革命期のみじめな民衆の姿をかきましたが,彼の長篇「母」は特に有名でわが国でもかって高く評価されました.
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