教養講座 小説の話・26
才女の文学
原 誠
pp.41-43
発行日 1958年11月15日
Published Date 1958/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910732
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ここ2〜3年の文壇は,才女の時代だというようなことがいわれ,才女ブームなどという言葉もつかわれています。なるほど,才能ある女流作家が次々とうまれ,文学界をにぎわしています。が,なかには,いかがわしい「才女」もいないわけではありません。マスコミの機構のなかで,才女は製産されているのです。
才女という言葉は,いつごろからつかわれだしたものでしようか。はつきりしたことは分りませんが,少なくとも文学の世界における才女というと,誰でも,あの平安朝の女流作家たちを思いうかべるでしよう。藤原道長の栄花の時代,中宮彰子や定子などにつかえた紫式部,和泉式部,清少納言たち。あるいはその人の名はつまびらかにされていないけれど,「蜻蛉日記」を書いた道綱の母といわれる人などがそれです。
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