講座
児童心理(1)
小林 さえ子
1
1実踐女子大学
pp.20-23
発行日 1955年1月10日
Published Date 1955/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200877
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はじめに
一般に,動物は高等であればあるほど,生れたばかりの時は無力であり,一人前になるまでには長い幼兒期を要するといわれています.人間はその極端なばあいです.多くの哺乳類の全生涯をもこえるような,長い兒童期・青年期を保育され教育されなければ,大人にはなれません.この成人になるまでの発達は,いま少しくわしくいえば,新生兒期・乳兒期・幼兒期・兒童期(狹義の)・青年期などの時期に区分されます.そして,それらのどの時期にも他とちがう特有の身体および精神の発達がみられるのです.健全な人間に成人するためには,その前のいろいろな時期に,順調な発達と充分な生活がとげられていなければなりません.いつも,一つの時期の完成が次の時期の発達の基礎になつているからです.たとえば,乳兒期には乳兒らしい生活を充分もつことが,やがて,健全な幼兒や青年を將来に約束するものといえましよう.
"三つ兒のたましい百まで"とか,"ゆりかごの中でおぼえたことは,墓場まではこばれる"とかいうことわざがあります.これらは,ごく幼い頃の生活や精神状態などが,後年まで,時には人生の終りまで強い影響をのこすという事実を物語つています.
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