講座
社會心理學の話(その6)—説得と暗示
中野 卓
1
1教育大学
pp.15-19
発行日 1955年1月10日
Published Date 1955/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200876
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説得 人々がそれぞれ「価値あり」と思うことは,前号に述べたように,厳密にみれば各人各樣であり,同じ物,同じ事柄でも,それと各人との両者を含む状況の中で,関係しているその関係の在り方によつて,なかんづく各人の内部にある評価体系,知識体系のありかたによつて,すなわち(それは人々のもつ環境・経歴によつて形成されてきたものであるから,その)各人の環境・経歴のありかたによつて,人は,さまざまな「価値づけ」の仕方をするものである.
社会生活をすることによつて生きてゆく人間は,しかし,自分が「価値あり」とするることを,そのまま他の人々にも「価値あり」と承認させて,同意のうちに安定を見出そうとするものである.「説得」は,その際,自分の信ずるところの「価値あるものを,他の人々にも「価値あるもの」として内心から承認させることを目標とする合理的行動である.
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