講座
児童心理(9)—学童期(その2)
小林 さえ子
1
1実踐女子大学
pp.20-25
発行日 1955年9月10日
Published Date 1955/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662201015
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
§3知的発達
幼児心性の根本的特徴が,自他未分化性や自己中心性にあることは前にのべました.これは個体が環境に対してとる態度に関係のある面をとり上げたものです.では心的構造の分化の程度はどうでしようか.エーリツヒ・シユテルンは幼児の心的構造の特性を,「未開発的単一性」と名づけています.そしてこの単一性が変化して,さまざまな心的機能が多様に分化し,発達してゆく児童期を「開発的多様性」とよんでいます.
ところで低学年学童の心性には,まだ可なり幼児期的な色彩が残つています.が,第3学年を過渡期として,第4学年以上になると児童期本来の特性があらわれてきます.開発的多様性は,学童期の知的発達にも明かにみられます.認識構造の分化がすすみ,自己中心的主観的世界から,客観的世界に認識の舞台が移つてゆきます.この時期は前期の空想的・非現実的な,いわば「想像生活時代」とことなり,「現実生活時代」であり,また「知識生活時代」ともいうべき特色をもつています.つまり小学校にいつて,教科を学ぶことにより童話の世界がこわされてゆくのです.そこに科学的知識の世界がひらけ,かれらの眼は外界とくに自然界にむけられます.
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.