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サンガー夫人の思い出
石垣 栄太郞
pp.21-25
発行日 1953年1月10日
Published Date 1953/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200432
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10月30日の朝,産兒制限運動で世界的に知られているマーガレツト・サンガー夫人が来朝されました.その夕方,東京会館で開かれた歓迎会のレセプシヨンで30年ぶりに私はサンガー夫人に再会しました.30年といえば三昔ですから,隨分長い間の空白ですが夫人は,私をよく覚えて居りまして,昔を語る一時を持ちました.
私が最初夫人に会つたのは全くの偶然で,ニユーヨークのグリニツチヴイレージという区域,美術家や,作家,新聞雑誌記者,役者などが多く住まつている所で,アトリエ兼用のアパートに住まつて居りましたところ,そこに引越して来たのが,サンガー夫人の一家でした.1916年と言えばアメリカが第一世界大戰に参加した年で,人心は不安な状態にありました.サンガー夫人は良人のウイリアムと別れて2人の子供を郊外のボーデングスクールに送り,たゞ1人で住んで居りましたが,それも腰かけ同樣で,ほとんどアパートに居ることは稀でした.私達のアパートが3階にあつて.サンガー夫人のが2階にありましたから朝,出かける時に,ちよつと顏を出し仕事の暇を見て3階のアパートに来て,静かな時を過しました.
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