伝記
サンガー夫人(1)—その生い立ち
地引 喜太郞
pp.58-60
発行日 1952年12月1日
Published Date 1952/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200240
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サンガー夫人は1883年9月14日に,アメリカ合衆国のニユー・ヨーク州,コーニンギという小さな工場町で生れた。父のマイケル・ヒギンスはアイルランド人で徹底した自由思想家であり,彫金と木彫を商売にしている一種の芸術家であつた。しかし,気質はユーモラスであり,家庭を愛し,妻のアンにたいしては深い愛情と尊敬を持つていた。アンは胸が惡くて,いつでも軽い咳をしていたが,病床につくということもなく,次ぎ次ぎと子供を産み,マーガレツト,後のサンガー夫人はその6番目の子供であつた。彼女の上に5人,下に5人,つまり11人きようだいの彼女はちようど眞ん中にあたるわけであつた。父の商売が商売だつたので,一家の生活は決して豊かではなかつたけれども,明るい環境の中で,子供たちは健康にすくすくと育つて行つた。
マーガレツトが8つの時に,母は最後の子供を産んだのであるが,このとき,たまたまお産の手伝いをした彼女は,赤ん坊というものが何うして生れるかを知つて異常なシヨツクを受けた。このシヨツクは,マーガレツトにとつては終生忘れることのできないものであつた。
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