看護婦さんへの手紙
感想
吉野 源三郎
1
1岩波書店
pp.13
発行日 1965年5月1日
Published Date 1965/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913577
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自分のことから話しはじめるのは恐縮だが,私は文学部の出身で,大学を出てから学校の先生をやったり,本屋の編集部につとめたりして,いつのまにか年をとってしまった。いまでは別にそのことを後悔はしていないけれど,若いころには,もっとほかの専門を学んでおけばよかったのに——と考えたことが,なんどかあった。
文学や哲学を勉強することは,きらいではなかったし,自分ひとりの楽しみとしてなら,それはそれで結構楽しくやってゆけるものである。むろんこれが仕事となると,その道の専門家としてやるまでには並みなみでない修業がいるけれど,ただそれだけの苦労なら,職業野球の選手だってやっていることで,なにごとによらず,避けることのできない段階で,不平のいえることではない。
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