視座
論文に対しての感想
青池 勇雄
1,2
1東京医科歯科大学
2川口工業総合病院
pp.737
発行日 1977年8月25日
Published Date 1977/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408905566
- 有料閲覧
- 文献概要
文章を書くことは面倒なことである.簡単にすらすらと書き下ろせる人もあるが,何度書き直してみても思うようなものが書けないで困つている人もある.私も後者に属する部類で,今までさんざん苦労してきたものである.楽に書けるのも,苦労するのも,天分によるのであろうが,また普段から心がけて書き慣れるように努めたかどうかにもよるのであろう.
診療や実験を通して,研究者には新事実の発見や研究の成果を発表する機会が多いが,単に口頭発表だけで終つては,たとえ抄録が残つていても,その発表は余り役立つものではない.どうしてもそのあと仕末として,論文発表をしておかなければならない.若いうちから論文を書くように慣れておくことが大切である.どういう風に書くかは各人の工夫によつて,異なるが,簡明要領よいものが良いにきまつている.論文の内容が豊富であれば当然長い論文となるが,逆に長い論文は必ずしも優れているとは言えず,もう少し短かくまとめられないものかと思う論文にも接する.学生の頃,内科教授呉建先生が「本当に立派な研究であれば,ただの一行の論文でも学位を授与する」と言われた言葉を思い出す.味わうべき言である.
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.