特集 肝臓病
輸血後肝炎
三辺 謙
1
1慶応大学・内科学
pp.23-26
発行日 1963年3月1日
Published Date 1963/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911873
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1.はじめに
ビールス性肝炎は肝疾患のうちでもっとも多い疾患であるが,これに2種類ある。伝染性肝炎(infectious hepatids)と血清肝炎(serum hepatitis)とである。この両者はともに黄疸を主症状とするもので,黄疸が現われてからみたのでは,いずれとも区別がつかないが,おのおのの病原体ビールスが異なっており,感染が起こってから発病に至るまでの潜伏期間に差があり,発病のときの症状もよくきいてみれば多少ちがっているのである。
くわしいことはあとで述べるが,伝染性肝炎の方は,原因であるビールスA(Virus IH)が患者の糞便中にあり,それが口からはいって感染をおこすのに対して,血清肝炎の方のビールスB(Virus SH)は患者の血液の中だけにいて,糞便にも尿にも出てこない。したがって血清肝炎は何かの必要があって全血輸血をしたあととか,血漿を輸液したあとに起こる。
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