今月の主題 輸血の実際と血液製剤
副作用・合併症の対策
肝炎と輸血
則岡 美保子
1
,
伊藤 和彦
1
1京都大学医学部付属病院・輸血部
pp.622-624
発行日 1989年4月10日
Published Date 1989/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402222403
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輸血後肝炎は血液製剤使用に伴って発症する.わが国では,売血血液を輸血に使用していた頃をピークとして,その後血液供給制度の改変,B型肝炎(HB)のスクリーニング導入により,輸血後肝炎発症件数は減少してきた.
輸血後肝炎起因ウイルスとしてB型と非A非B型(NANB)が知られている.
NANBという意味ではcytomegalovirus(CMV),Epstein-Barrvirus(EBV)による輸血後肝炎もあるといわれているが,高力価抗体価をもつドナー血の輸血で輸血後肝炎発症率が高いことよりの推測であり,明確な発症件数はわからない.そして,一般的にはNANB肝炎ウイルスとは1種または2種以上の不明のウイルスを指すものとして扱われている.
1988年5月,アメリカ合衆国Chiron社が,NANB肝炎ウイルスとみられるRNAウイルスのクローニングに成功したと発表した1).この時点では2種以上のウイルスの存在については否定的であると報じたが,1988年後半の研究ではこの点について再検討が加えられているようである.したがって,この結論については今後の研究を待たねばならない.
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