特集 肝臓病
肝臓を強くする薬とは
高橋 晄正
1
1東京大学医学部
pp.26-29
発行日 1963年3月1日
Published Date 1963/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911874
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《心臟が強い》ということばは昔からありましたが《臟が強い》というのは,どういうことを意味するのでしょうか。肝臓には,いろいろな毒物—体内でできるものも,体外からはいり込むものもあります—を解毒する働きを持っているのですが,毒物の力が強すぎるとか,毒物の量が多すぎるとかした場合には,肝臓はくたびれてしまって《弱い肝臓》になり,それが極端にたると,《肝臓が悪い》という状態になる,というように考え,ある薬をつね日ごろから飲んでいると,肝臓はちょっとやそっとの毒物ではやられなくなる—これを《肝臓を強くするくすり》あるいは《強肝剤》というというのがその言い分のようです。
かりにそのような強肝剤があるとしても,それはウイルスの感染によって起こる流行性肝炎や血清肝炎,あるいは肝硬変の治療には,何の役にも立たないでしょう。というのは,このような急性肝炎や肝硬変の場合の肝傷害の起こるしくみは,上にあげたような解毒作用の低下とは,とくに関係がないからです。つまり,強肝剤というものが存在するとしても,必ずしも治療剤となるというわけのものではないことになります。
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