特集 肝臓病
肝臓病の治療
大北 速男
1
1大阪大学・内科学
pp.20-23
発行日 1963年3月1日
Published Date 1963/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911872
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はじめに
肝臓は人の体の中では最大の臓器で,それだけ重要な働きをもっているわけです。そのおもなものをあげてみますと,糖質,蛋白,脂肪の代謝,これは食物から摂取した栄養を自分の体に都合のよいように造り上げたり,分解したりするもっとも大事な働きです。その他胆汁の生成と排泄,解毒作用,ホルモンや水,電解質の代謝,血液の凝固にも関係し,また体の流血量の調節も行なうといわれております。したがって肝臓が悪くなるといろいろの体の変調が現われてきます。
このように肝臓は重要な働きをする器官であるためもあるのでしょう。肝臓は実際に必要な力以上の余力をもっており,また再生する力が旺盛です。肝臓を一部(1/3〜1/2)切り取っても,もとと同じ組織が増殖してもとの重さになります。人の体でこんな器官はほかにはありません。このように予備力と再生力をもっていることは治療の上にもありがたい面です。肝臓の一局部が侵される肝臓癌などでは肝臓の働きはほとんど侵されません。しかし全部が一様に侵される肝炎や肝硬変などでは,働きもそこなわれます。
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