教養講座 小説の話
坪内逍遙の「小説神髄」
原 誠
pp.65-68
発行日 1956年8月15日
Published Date 1956/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910168
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今,わが国で月々出版されている書籍の数はまことに莫大なもので,マジメなものもあれば,インチキなものも多い。文芸関係だけを考えてみても,私たちは一体,こんなに沢山あるなかから何をとりあげて読んだらいゝのか,どれがマジメでどれがインチキか,どんな小説が立派でどんなのがクダラない作品なのか,まつたく戸迷いしてしまうくらいです。新聞の広告や本屋の宣伝文句は,みんなウマイことを云つている。それに釣られて高いお金をだして読んでみたところ,ガツカリさせられたり,腹が立つたりするのが少くないのです。
そこで,そんなものに騙されず,ガツカリさせられたり腹を立てたりしないようにするためには,私たちにはやはり,マジメなものとインチキなものとを識別する「眼」が必要だと痛感させられるわけです。どんな小説がすぐれていて,どんなのがクダラない作品なのかということを判断する「眼」です。
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