教養講座 小説の話
浪漫主義と「文学界」
原 誠
pp.50-54
発行日 1956年10月15日
Published Date 1956/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910196
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私たちは毎日の生活の中で,よく,ロマンティックだとか,浪漫的だとかいう言葉をつかつています。誰かさんと誰かさんのロマンス,などということも云います。が,嚴密にいつて,それらの言葉の歴史的背景と正確な意味内容はどんなものなのか。案外,私たちは無関心に使いすぎているようです。
文学の歴史からみて,浪漫主義(Romanticism)というめは,18世紀の後半から19世紀の前半にかけて,ドイツ,イギリス,フランスなどヨーロッパ各地におこつた非常に大きな文学運動を総括した名称なのです。簡単に説明しつくすことは容易でありませんが,このヨーロッパの浪漫主義がどんな歴史的社会的な条件のもとにおこつたかというと,ドイツの場合も,イギリス,フランスの場合も,それぞれ今までの社会秩序が崩れたあと,新しい社会がおとずれるまでの,不安と混乱をきわめた過渡期におこつたものなのです。
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