Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
内村祐之の『浪漫王の幻想』―精神障害者の社会貢献
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.90
発行日 2007年1月10日
Published Date 2007/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100456
- 有料閲覧
- 文献概要
昭和8年に発表された内村祐之の『浪漫王の幻想』(中央公論社)は,ババリアのルードウィッヒ二世の精神的な病と芸術に関して述べられた病跡学的な論考である.
ルードウィッヒ二世は眉目秀麗,その優雅な物腰とロマンティックな熱情で民衆からも愛されていた.しかし,彼は次第に孤独を愛して非現実的な空想に耽り,自分の殻に閉じ籠もるようになった.やがて彼には幻視や幻聴も出現し,国の政治を放擲して次々に壮麗な城を作ることになる.彼が愛したノイシュヴァンシュタイン城には,「華麗といささかグロテスクな色彩を交えた神秘との交錯」がみられ,この不思議な対照はある種の病的な人格にみられるとも言われるが,王はこうした国家予算を顧みない濫費を続けたこともあって,精神病の診断を受けて幽閉され,自ら湖に身を投げて死ぬのである.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.