随筆
或る患者のたわごと〔1〕
須谷 照子
1
1日本専売公社病院看護学院
pp.68-71
発行日 1956年10月15日
Published Date 1956/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910198
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梗概
急性虫垂炎が起因となつて以後3回にわたる開腹手術をうけた私は,久しい春秋のあけくれを絶えず死の恐怖と生の執着にもだえ乍ら孤愁の病床にこの手記を綴つてきた。もとより筆のつたなさから必ずしも世に問うべき作品ではない。しかし苦悩の中から画かれた「患者のたわごと」は今なお人知れぬ患者の悲哀であり苦悩であると信じたい私は,自己の未熟をも省りみずここにその手記を掲げることにしたが万一にも之が若きナースや学生達の一助にともなれば誠に幸いとするところ,不本意にも文中に非礼の段があれば平に御容赦希いたい。なお現在の健康が数多い人々の真実に支えられてきたことを思うとき,あるものはただ無限の感謝であり更に終始献身的努力を惜しまれなかつた鈴木,彦坂両博士並に片桐監督はじめ多くの方々に対し満腔の謝意に代えてこの一編を贈りたい。
斗病記というよりは懐かしい追憶にもにたものが年とともに私の脳裡を楽しませてくれるばかりか,これからの残された人生にも時折は心のなぐさめと安らぎを見出してくれることだろう。
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