教養講座 小説の話・19
新感覚派の文学
原 誠
pp.46-48
発行日 1958年4月15日
Published Date 1958/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910584
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昨年東京で国際ペンクラブ大会がひらかれたとき,その議題の中心となつたのは,東西文学の相互影響ということでした。ヨーロツパ諸国をはじめアメリカなど,いわゆる欧米の文学が,東洋の文学にどんな影響をあたえ,また東洋の文学が欧米の文学にどのような影響をおよぼしたか,おたがいの文学交流はどうだろうかということを,世界各国のペン代表が論義しあつたわけですが,次第に論議をかわしていくうちにこうしたことは文学だけの問題ではなくて,それぞれの国文学をささえているその国の生活感情,伝統,信仰,風俗習慣,教育など,あらゆる面における文化現象の問題だということになつたようです。イギリス文学はイギリス人の生活感情のうえにたち,日本の文学は日本人の生活感情のうえになりたつています。
信仰という問題ひとつとりあげてみても,日本人の大部分は仏教徒だとはいいながらも,神道の習慣にもしたがつているし,クリスマスには教会にもいつてみるという,どつちつかずのあいまいさで,神や仏がやたらに多くて,本当のきびしい信仰につらぬかれている人はひじように少ないようですが,ところがヨーロツパの信仰は,紀元のじまつはたときから今日までさらに,未来永久にいたるまで,キリスト教精神につらぬかれているのです。このちがいが文学にもあらわれてきます。
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