教養講座 小説の話・17
ブロレタリア文学運動の発生
原 誠
pp.44-45
発行日 1958年2月15日
Published Date 1958/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910538
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さきごろトルストイの大作「戦争と平和」が映画にもなりましたから,ごらんになつた方も多いと思います。あのなかでは,戦争場面もさることながら,帝政ロシヤの貴族階級の豪華な生活が,色つきのヴィスタビジヨンの画面にケンランとくりひろげられていました。しかし,ああした豪奢な生活も,社会的な生産機構の面から考えると,農民や労働者たちの,汗と血を犠牲にしたうえになりたつていたのです。これはなにもロシヤに限つたことではありません。貴族という非生産的な階級が,ゼイタクのかぎりをつくして生存するからには,その反面,みじめな農民・労働者が何千何万と苦しい仕事に追いやられていたのです。フランスでもそうですし,イギリスでも,ドイツでもそうです。1人の貴族のために,100人の,いや1000人の労働者が苦しんでいたことでしよう。ところで,この生活の量と質とのへだたりは,殊に帝政ロシヤではひどかつたようです。非人間的な苛酷な圧迫をうけていた農民・労働者たちは,やがて怨嗟の声をあげ,そして彼らも人間的な自由を求めてたちあがつたのです。貴族を倒し,王室を追放しました。それが,1917年のロシヤ革命です。
1917年というのは,日本流にいえば大正6年にあたります。そして世界的な事件としては,このロシヤ革命のほかに,ちようど第1次世界大戦が翌1918年(大正7年)におわつた,ということになります。
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