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病人の食事への心づかい(1)—まず食慾を
吉沢 久子
pp.35-37
発行日 1954年4月15日
Published Date 1954/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661909544
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健康なときには,ほとんど食物に好き嫌いのない私も,ちよつと病気をすると,自分でもふしぎに思うほど,食べたいと思うものがかたよつてきます。べつに,胃腸のぐあいがわるくもないのに,さつぱりとしたもののほかは,見ただけでもたくさんだと思うのです。
そんなとき私は,本棚から,食べものに関する本をだしてきて,気のむいたところをよんでみます。食道楽の人がかいた随筆などが,一番心をひかれます。たとえば,春の小川のふちに,さゝやかに芽生えはじめた田芹をつんで,芹御飯を炊くすばらしい味のことや,初夏の筍を,涼しげな鉢に白ゆでにして盛り,マヨネーズで食べるうまさについて書いてあつたりすると,口のなかにつばがたまつてきて,すぐにでも食べてみたくなるのです。
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