Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
伊藤整の『発掘』—昭和40年代の脳卒中患者
高橋 正雄
1
1筑波大学
pp.896
発行日 2023年8月10日
Published Date 2023/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202907
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昭和45年に伊藤整が発表した『発掘』(新潮社)の冒頭には,脳出血の後,入院治療もリハビリテーションも受けることなく,自宅で寝たきりに近い状態のまま亡くなった65歳の女性の姿が描かれている.
東京で官立大学の教授をしている主人公の圭三は,かねてより故郷・北海道で療養中の姉が,危篤になったとの連絡を受ける.十代なかばで両親を亡くした圭三は,同じ村の遠縁に嫁いでいた姉の子供のように育てられ,大学の学資もその後の教授の姪との結婚も,「田舎で農家の主婦として生きるには,あり余るほどの才能を持った気の強い女」だったこの姉の世話になっていたのである.
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