東西詞華集
後の日に—伊藤 整
長谷川 泉
pp.34-35
発行日 1953年1月10日
Published Date 1953/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200436
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D・H・ロレンスの「チヤタレー夫人の恋人」の飜訳をめぐる裁判によつて有名になつた伊藤整は,今日では小説家,或いは評論家としての名前が通つているが,彼の文学的な眼は詩人としてのスタートによつて磨かれた。彼は小樽高商の出身であるが,彼の一年先輩には後年「蟹工船」や「党生活者」「不在地主」などでプロレタリア文学の輝しい金字塔をうちたて非業の最後をとげた小林多喜二がいた彼は在学中小林の存在に威圧を感じながらもイエツを読み,またすぐれた訳詩集である上田敏の「海潮音」や堀口大学の「月下の一群」や詩誌「日本詩人」の影響下に詩眼を獲得していつた。
作家として,評論家として,飜訳者として多彩な活動を示している今日の伊藤整の文学的地盤はこのようにして形成されていつたといつてもよい。第一詩集「雪明りの路」は自費出版で大正15年末に出された。「夜まはり」という詩を見よう。
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