Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
司馬遼太郎の『ひとびとの跫音』—昭和40年代の脳卒中への対応
高橋 正雄
1
1筑波大学
pp.1116
発行日 2024年10月10日
Published Date 2024/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552203248
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司馬遼太郎が昭和56年に発表した『ひとびとの跫音』(中央公論新社)には,正岡子規の死後養子となった忠三郎が昭和44年,68歳で脳卒中を起こした時の様子が描かれている.
その日珍しく家族揃って花見をした後,ホテルで夕食をとっていた時のことである.忠三郎はそれほどアルコールを飲んでいなかったのに,「顔の色がいつもとはちがい,変な赤味を帯びている」ように見えた.忠三郎はコース料理の最後に出た特大のアイスクリームを二口か三口で嚥みこんだが,この時の「一気に嚥みこんで腹の中を冷やしたアイスクリームが,ほどなく突発する異常のひきがねになった」と,司馬は考えている.
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