Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「梅切らぬバカ」—自閉症の息子と母,地域が織りなす発展途上の物語
二通 諭
1,2
1札幌学院大学
2札幌大谷大学
pp.1273
発行日 2022年10月10日
Published Date 2022/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202652
- 有料閲覧
- 文献概要
「月曜日のユカ」(監督/中平康:1964)などで<小悪魔>として世に出た加賀まりこは,ちょうど思春期に入った筆者にとって,どことなく神秘的で,異次元の存在だった.あれから幾星霜,実生活における晩年の加賀は,自閉症の息子をもつ男性と事実婚の道を選び,それをなぞるかのように「梅切らぬバカ」(監督/和島香太郎)で,自閉症者・山田忠男(塚地武雅)の母・山田珠子を演じた.
忠男は,母と二人暮らし.6時45分の起床を皮切りに,「6時56分,6時56分」,「7時3分,7時3分」などと呟きながら,トイレや歯磨きなどの日課を分刻みでこなしていく.カナータイプの自閉症者として,「学校Ⅲ」のトミーや「くちびるに歌を」のアキオの系譜に連なるが,それらと趣を異にするのは,子ども・青年ではなく,50歳の誕生日を迎える中年だということ.それゆえ物語は,自閉症者本人と親の老いという課題から起動する.
Copyright © 2022, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.