連載 武井麻子のOh!それみ〜よ・11
—糸川昌成著—『科学者が脳と心をつなぐとき 父と母と私が織りなす50年の物語』
武井 麻子
1
1日本赤十字看護大学
pp.301-305
発行日 2017年5月15日
Published Date 2017/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200368
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精神療法か、薬物療法か
同じように精神医療に携わっていても、精神療法的かかわりを志向する人と、生物学的な研究や治療を志向する人とでは、考え方も実践の仕方も全く違っていて、交差する点はあまりないと考えられてきた。私自身も、日本では薬物療法一辺倒になりがちな後者の考え方には批判的だった。とはいえ、もともと実験が大好きな“リケジョ”だったこともあり、心理学的仮説を裏書きするような大脳生理学などの研究成果には興味をそそられてもいた。例えば愛着と脳内物質との関連などに関する最近の知見などを聞くと、ワクワクしてしまうのだ。
今回紹介する『科学者が脳と心をつなぐとき—父と母と私が織りなす50年の物語』の著者、糸川昌成さんは、都立松沢病院の隣にある東京都医学総合研究所に勤務する研究者である。かつてここには東京都精神医学総合研究所があり、私も時々お邪魔していたので、なんだかお知り合いのような気がしないでもない。
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