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■はじめに
筆者は,1981年6月より世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局(WPRO)の精神衛生および麻薬問題担当の地域顧問として勤務している。筆者の主要な任務の1つは,各国政府と協力して,精神障害者に対する施策を向上することである。しかしながら,多くの発展途上国において精神衛生対策は,極めて貧弱でなきに等しく,多くの障害者は薬物療法や心理療法,社会訓練など近代精神医療技術の恩恵を享受することができていないというのが実情である。
アジアの精神医療という課題で本誌に執筆を依頼された機会に,アジアを中心とした西太平洋諸国で,WHOの精神衛生プログラムを推進するに当たり,筆者が発展途上国の精神医療に関して教えられたこと,考えたことも合わせてまとめてみたい。
よく知られているように,WHOは国連の専門機関の1つであり,健康に関しての国際的な協調,指導をその役割としている。本部をジュネーブに置き,世界に6つの地域事務局があり,それぞれの地域を担当している。西太平洋地域事務局(Western Pacific Regional Office)は,西太平洋地域36の国々や地域に対する,技術援助,経済援助を行うに当たっての基地としての役割を果たしている。西太平洋地域事務局はマニラ(フィリピン)にあり,オーストラリア,ブルネイ,中国,カンボジア,フィジー,日本,キリバス,ラオス,マレーシア,ニュージーランド,パプアニューギニア,フィリピン,韓国,サモア,シンガポール,ソロモン諸島,トンガ,バヌアツ,ベトナム,などが加盟している。最近,ミクロネシア連邦および人口1万人に満たないトケラウが加盟国として新たに加わった。精神衛生の分野では,中国,フィジー,韓国,ラオス,マレーシア,パプアニューギニア,フィリピン,ベトナム,南太平洋の小諸島の各国政府と活発な協力がなされてきた。1993年度よりカンボジアにおいて,精神医療の再建に向けてのプログラムが開始されようとしている。
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