JIM臨床画像コレクション
発展途上国における甲状腺腫
高岸 壽美
1
,
藤村 聡
2
1日本赤十字社和歌山医療センター看護部
2京都大学医学部附属病院総合療養部
pp.84
発行日 2002年1月15日
Published Date 2002/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414903450
- 有料閲覧
- 文献概要
甲状腺腫というと,日本の医師は,悪性の腫瘍か,バセドウ病をはじめとする甲状腺機能亢進症や,自己免疫疾患である橋本病などの慢性甲状腺炎などを連想する・ところが,発展途上国では,こうした甲状腺の疾患を持たないのに,甲状腺腫に苦しむ人々が多い.その原因は"第三の栄養不良"と呼ばれる微量元素の欠乏症によるもので,これらの国々での甲状腺腫は慢性的なヨード欠乏が原因であることが多い(本号JIMレポート参照).
ヨードが食物中に含まれる本邦ではこうした甲状腺腫を見かけることは皆無に近いが,地球的な規模では,もし食塩や飲料水にヨードの添加がされていない場合,こうした甲状腺腫を発症する可能性のある人は約13億人いると推定されている.とくに発展途上国では"飢餓問題"が注目されがちであるが,飢餓問題が解決されてもヨード欠乏症に苦しむ人々も多い.表紙写真は,筆者の高岸が干ばつ被害のエチオピアへ国際救援に派遣された時に撮らせていただいた女性の甲状腺腫である.この地では,多くの人が甲状腺腫に悩まされていた.また,こうした地方では,妊婦がヨード欠乏症の場合は先天性のクレチン症に罹患する子どもも多く,この子どもたちは知的障害などさまざまな障害を持って一生を送ることになる.
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.