Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「ちづる」―自閉症の妹・母・僕が織りなす家族の肖像
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.601
発行日 2011年6月10日
Published Date 2011/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102111
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「ちづる」(監督/赤崎正和)と,かつて本欄(2003年9月号)で取り上げた「home」には三つの共通点がある.大学または映画学校の卒業制作のドキュメンタリー作品であり,被写体が制作主体のきょうだい・家族であり,制作主体が,きょうだいの「ひきこもり」という状態をなんとか改善したいと願いながらカメラを回しているということだ.
妹ちづるは,知的障害を併せもつ自閉症.開巻一番,「大友みなみ」というB級タレントからの「成人式おめでとう」と書かれたハガキに大喜び.このシーンは20歳であることを観客に知らしめただけではない.直後,母親は,ハガキが自分で創作した偽物であることをカメラに向かって告白する.カメラを回す兄の正和は,当然ながら「良心の呵責はないの」と詰問.母親は来るはずもないハガキを待たせて,落ち込む日々にするよりもいいでしょ,といった主旨の言葉を返す.
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