連載 ケアの方舟・10
嫁と姑,母と息子
石原 雅彦
pp.350-352
発行日 2005年4月1日
Published Date 2005/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100130
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姑(しゅうとめ)の場ふさがり
僕が育ったひとりっ子の母子家庭では,小学校が長期休暇に入ることは,外に出て働く母にとって息子の世話という厄介な仕事がひとつ増えることに等しかった。そのため,母は学校が長期休暇に入ると郷里の実家や兄弟姉妹の家,そして親切な友人の家などに僕を預けた。「他人の飯を食う(他家に寄食して実世間の経験を積む)」という言葉があるが,他家に寄食して学んだことのひとつに「姑のいるお嫁さんはつらいものだ」という現実があった。
小学校の長期休暇の最中には盆と正月があり,預けられた本家には離れて暮らす家族が帰省したり,友人知人の来訪があった。次々にやって来て家の長である舅姑に挨拶をし,当然のような顔をして何日も宿泊していったりする。それらの客の接待は主に嫁の仕事になる。
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