Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
島崎藤村の『夜明け前』—幕末・維新期における脳卒中患者
高橋 正雄
1
1筑波大学
pp.714
発行日 2021年7月10日
Published Date 2021/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202273
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昭和10年に完成した島崎藤村の『夜明け前』(新潮社)には,主人公・青山半蔵の父親・吉左衛門が脳卒中で倒れた時の様子が描かれている.
木曽・馬籠宿本陣の当主だった吉左衛門が「中風」に倒れたのは文久2年4月,64歳の時である.発症時の吉左衛門は,「口も言うことが出来ない.足も起つことが出来ない.手も,動かすことが出来ない」ような状態だった.そのため,それまで使っていた味噌納屋の二階への梯子段の昇降は足もとが覚束ないので,風呂場に近い部屋で寝起きするようにした.そのほうが「入浴を勧めるには都合が好い」し,囲炉裏ばたや勝手にも続いているため,「みんなで看護するにも都合が好い」からである.
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