ものがたり・日本の医学・事始・10
幕末の洋学
しまね きよし
1
1“思想の科学”
pp.85-87
発行日 1967年10月1日
Published Date 1967/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661913325
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■医学・兵学における専門分化
この辺で,幕末の洋学がどのようなものであったかを,全体的に概観しておきたい。
洋学者の大部分は医師であり,それもほとんどは外科医であった。しかし,外科専門というのではなく,内科も小児科もなく,外科を中心とした全科専門であった。これは蘭学が利用厚生の卑近な知識を獲得するために移入されたことの反映であって,蘭学の中心が医学であった当時においては,医学が全科専門になり,医学から中心がそれると,文字通り,百科全書になっていく。しかし蘭学の成果が積み重ねられるにつれて,幕末にいたると,それが次第に変化してくる。その変化は三つに分類することができる。ひとつは,専門分化であり,ひとつは,自然科学オンリーから社会科学への移動であり,ひとつは蘭学から英仏・独学への変化である。
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