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はじめに
筆者がかかわる公益社団法人全国老人保健施設協会(以下,全老健)では国際生活機能分類(International Classification of Functioning,Disability and Health;ICF)のコードを利用してさまざまな障害を抱える人たちの日常生活自立度(activities of daily living;ADL)を客観的に評価する指標ができないものかとの思いから,高齢者の状態把握に敏感な項目を難易度順に配置した14項目×各5段階のガットマン型スケールにより測定するICF Stagingを開発した.これは利用者が実際に「行っている」残存能力に着目した指標である.
従来のアセスメントの考え方は利用者のできない部分に着目しており,援助内容や介護の手間を考えるには適しているが,自立支援に向けた展開には使いにくさがあった.要介護認定に代表されるさまざまな指標に,「一部介助」や「見守り」という曖昧な概念が入っている.「自立」や「全介助」は明確な指標になるが,「一部介助」や「見守り」といった概念は,障がい者本人の視点ではなく,評価するケアワーカー側の視点によるものである.こういった曖昧な概念が入ったとたんに,客観性が薄れてしまうことに気づいたことからICF Stagingの開発が始まったのである.
この指標の長所は,利用者の状態を数値で評価することが可能なため状態像を可視化できること,そして介入効果や長期的な状態変動が把握しやすいことである.また,難易度順の階層構造になっているため,リハビリテーションなどの目標設定が容易であることから自立支援に向けたケアプラン策定に適している.
なお,スケールの妥当性は再調査法により同一調査者間,異なる調査者間での調査結果の一致率を検証している.さらに入所から退所後1年までの追跡調査を実施し,時系列変化の把握についても検証している.
本稿では,老健施設において活用されているICF Stagingの現状と今後の展望について論じてみたい.
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