Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ヘッセの『荒野の狼』―精神的卓越性と精神障害
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.884
発行日 2005年9月10日
Published Date 2005/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100183
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1927年,ヘルマン・ヘッセが50歳の時に発表した『荒野の狼』(永野藤夫訳,講談社)は,ヘッセの分身的な存在であるハリー・ハラーの手記を中心に構成された物語であるが,その冒頭部分では,精神的に傑出した人間こそが病むという,精神障害をめぐる一種の価値観の転倒がなされている.
『荒野の狼』の冒頭には,ある編集者がハラーとの出会いを語る序文が付されているが,そのなかで彼はハラーに会った時の印象を,「わたしの最初の単純な反応は,反感だった」と語る.彼が最初に感じたのは,「内気」で「非社交的」なハラーの精神か情緒か性格が病んでいるということで,彼は健康者の本能からそれに抵抗したという.
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