巻頭言
夜空のリハビリテーション
村岡 慶裕
1
1早稲田大学人間科学学術院健康福祉科学科
pp.217
発行日 2013年3月10日
Published Date 2013/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552110044
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「これが今晩の横浜の夜空です.本当はこんなに沢山の星が見えるはずですが,実際には街の灯りや空気の汚れで見ることができません」.先日,小さい息子たちを連れて,プラネタリウムを訪れた時に耳にしたナレーションである.まさしく満天の星で,本物はどんなに美しい夜空だろうかと思いを馳せた.
「念じるだけで,ロボットや家電,車いすを制御」,「高齢者や要介護者の自立社会の実現に役立つ技術」,「国が100億円超に加え,追加支援を決定」等々,最近,リハビリテーションにも関連してUD型ECSのBMIやロボットなど先端技術研究に期待が寄せられている.私も,約20年前にまだ臨床を知らない理工学部生の頃,まったく同じことを考えていたが,一昨年閉院した慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンターで研究をするようになり,このような考えは失せた.今では,40年後の自分が,「脳波帽子を被り,あるいは脳にICチップを埋め込み,語らず動かず念じるだけ」という生活をしていたいとは思えない.人と語らい,二足で歩き,手で道具を使うという,より人間らしい生活を望むし,障害を受け入れ,人と人とが支えあう人間社会であって欲しいと願っている.また,廃用により心身が衰えるだろうとか,認知症も対象であるかとか,燃料代や維持費など介護ロボットの介護負担は膨らむだろうとか,大規模停電やPCウィルス大感染で万事休すだろう,などということも頭をよぎる.
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