特集 SUN☺D臨床試験のインパクト—日本初の医師主導型抗うつ薬大規模臨床試験から学ぶ
SUN☺D臨床試験に参加して行った工夫
あらたまこころのクリニックから—夜空に,「星」より輝く光る「太陽」となることを願って
加藤 正
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1医療法人和心会あらたまこころのクリニック
pp.62-63
発行日 2020年1月15日
Published Date 2020/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205982
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私たちのような町の精神科開業医が,診察室で目の前の初発の単極性大うつ病性障害患者さんに薬物療治療を始めるときに,何を目安にしたら良いでしょうか? もちろん,STAR*Dなど海外の研究や国内外のガイドラインはあります。急性期治療では,「患者さんと一定期間,服用を続けるように約束する」「薬の用量は,十分な量を使わないと効果が得られないから控えめにせず,有害事象が出ないかぎり,十分な量をしかるべき時にしっかり使う。寛解まで至れば,維持,減らすべき時に減らし,止めていくこと」とされています。しかし,そうやって薬物療法を続けたつもりでも寛解にまで至る患者さんは半分以下と言われ,効果がなかった半分以上の患者さんは脱落します。私たちは,反応の良好な患者さんとだけ診察室でお会いしているので,医者個人の経験だけを頼りにしていては,初発のうつ病に対する薬物療法計画は把握できません。診断のばらつきや個人差などもありますが,そうなると,さまざまな疑問が浮かんできます。
そもそも,日本人のDSM-Ⅳ-TRのうつ病患者に,最初の抗うつ薬の「十分」な処方量とは?,次の抗うつ薬を,どのタイミングで,どのように工夫するのか? 有害事象は,どれくらいか? 抗うつ薬はどんな症状が改善すれば,効果があったと判断するのか? どれくらい効果があるのか? という切実な問題に対する明確な座標はなく,まるで,真っ暗闇の夜道を歩いているような思いです。
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