巻頭言
リハビリテーション医療のリハビリテーション
才藤 栄一
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1藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座
pp.401
発行日 1999年5月10日
Published Date 1999/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108963
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私の知るところでは,リハビリテーション医療の本質は行動学習である.すなわち,再びできるようになる(re;again,habilis;able)努力の過程である.われわれリハビリテーション医療者は患者個人の能動的学習過程を積極的に支援する方法論を持つ点で特異的である.そしてこの過程はその積極性という点からみれば攻めの医療ともいえる.今話題の金融問題を例にとるなら,金融機関への大量の資金注入が緊急の延命処置(救急医療),すなわち守りの治療であるのに対し,その後,金融機関がさまざまな抜本的改革を行って新しい体制を創りあげ再生していく過程がリハビリテーション医療にあたるだろう.
したがって,本来,この過程は決してのんびりとして創意工夫のないものでも,緊張感なくゆっくりと過ぎゆく時間のなかにあるものでもないだろう.また,多くの能動的変化を患者に求めるのであるから,医療者側も自分が変わるべき場合にためらってはならないだろう.しかし,実際には多くのリハビリテーション組織が,愛情はあるがゆっくりとして緊張感のない体制で運営されている,あるいは社会情勢の変化に焦りは感じても小手先の対応のみで自らを変えようという抜本的対策はとっていない,と感じるのは私だけだろうか.
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