連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・125
夜空の月に目を輝かせる赤ちゃん
柳田 邦男
pp.1036-1037
発行日 2016年11月10日
Published Date 2016/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686200582
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昼下がりの乗客の少ない時間に電車に乗ると,私には異様としか思えない光景が目の前に広がっている。窓を背にした長椅子の人々も私の両脇の人々も,ほとんどがスマホかタブレットの操作に熱中しているのだ。たまに1人くらい,文庫本を読んでいる人を見かけるが,そういう人は珍しい。窓の外の街の風景とか空の雲を眺めている人はほとんどいないのだ。
特に愕然となるのは,子どもを間に座らせている親子3人が,会話をするでもなく,それぞれにスマホに集中している姿だ。窓から見える空に美しい巻雲が流れていようと,遠くにスカイツリーが見えようと,もうそういう風景にはまるで関心を向けないし,互いに会話もしない。
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