Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ドストエフスキーと児童虐待―『カラマーゾフの兄弟』第5篇第4より
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.380
発行日 2001年4月10日
Published Date 2001/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109475
- 有料閲覧
- 文献概要
近年,わが国でも児童虐待が大きな社会問題となっているが,『カラマーゾフの兄弟』第5篇の「叛逆」(米川正夫訳,岩波文庫)には,当時のロシアの児童虐待の例が紹介されている.というのも,カラマーゾフ家の次男イワンが,この種の事件の収集家だったため,例えば「知識階級に属する立派な紳士とその細君が,やっと7つになったばかりの生みの娘を笞で折檻」した事件を報告しているのである.この父親は,笞で一打ちするごとに情欲を募らせて10分間打ちつづけたため,最初は「お父さん,お父さん」と泣き叫んでいた娘も,しまいにはそれもできなくなって,ぜいぜい言うようになったという.
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.