Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』—治療者としてのゾシマ長老
高橋 正雄
1
1筑波大学
pp.848
発行日 2025年8月10日
Published Date 2025/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038698220530080848
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ドストエフスキーが1880年に完成した『カラマーゾフの兄弟』の第1編5『長老たち』(亀山郁夫訳,光文社)には,優れた治療者としてのゾシマ長老の姿が描かれている.
ロシアの修道院に長老制度が現れたのはごく最近のことだが,この町の修道院が,聖者の亡骸や奇跡を起こす聖像などがないにもかかわらず,ロシア中にその名を轟かせるようになったのは長老たちのお蔭だった.「長老たちに会い,説教を聴くために,ロシア各地からたくさんの巡礼者たちが,数千キロの道のりを超えてこの町を訪れてきた」のであり,「平民も,あるいは相当に高い家柄の者たちも,修道院の長老のもとへ押しかけその前にひれ伏して,自分の疑い,罪,苦しみを懺悔し,助言と説教を求める」のだった.
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