Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ジイドの『ドストエフスキー』―病いと創造性
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.288
発行日 2007年3月10日
Published Date 2007/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100494
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1923年にジイド(1869~1951)が発表した『ドストエフスキー』(寺田透訳,新潮社)では,てんかんという持病を抱えていたドストエフスキーの作品に,ムイシュキンやキリーロフといったてんかん患者が数多く登場することを例示しながら,病いと創造性の関係に関する病跡学的な見解が示されている.
ジイドはまず,「すべての精神上の大改革,ニーチェならすべての価値の転換と呼ぶであろうことがらが,生理学的不均衡のおかげで生ずる」として,創造と病いの関係を次のように説明する.「安楽のうちにあると思考は休んでしまう.そして事態が思考に満足なものであるかぎり,思考はそれを変化させようともくろむことができない」,「一つの改革の根源には,かならず,不快感というものがある.改革者が悩む不快感は内的不均衡のそれである」,「彼は新しい均衡を希求する.彼の仕事は,彼の理性,彼の論理によって,彼がみずからのうちにあると感ずる無秩序を再組織しようとするこころみにほかならない」.
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