Sweet spot 文学に見るリハビリテーション
生の受容と死の受容―『カラマーゾフの兄弟』第6篇より
高橋 正雄
1
1東京大学医学部精神衛生・看護学教室
pp.817
発行日 1995年9月10日
Published Date 1995/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107946
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死の受容は,おそらく人生における最大の「障害受容」であろうが,『カラマーゾフの兄弟』第6篇(米川正夫訳,岩波文庫)における,ゾシマ長老の兄マルケールの死に方には,その精神性の高さにおいて一種独特のものがある.
マルケールは貴族の生まれで,元々「華奢で弱々」しかったが,その彼が18歳にして肺病に侵された.医者は死期の近いことを母親に告げ,マルケールにも聖餐を戴くよう勧めた.ところが,これを聞いたマルケールは,自らの病気の重いことを察し,母親を喜ばせようと,それまで罵倒していた教会へも通うようになったのである.
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