Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
「将軍老人」の治療的態度―ドストエフスキーの『白痴』第3篇6より
高橋 正雄
1
1東京大学医学部健康科学・看護学科精神衛生学教室
pp.803
発行日 1993年9月10日
Published Date 1993/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107449
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ドストエフスキーの『白痴』第3篇6(原卓也訳,新潮文庫)には,シベリアへの流刑囚に個人的な慈善活動を行っていたモスクワの一老人の挿話がある.この老人は「将軍」と呼ばれていたが,彼は「生涯,監獄や犯罪人のあいだを駆けずりまわり」,しかもそれを「きわめてまじめに,敬虔な態度でやってのけた」ため,囚人達の心に強い印象を与えていた.実際.「将軍老人」のことはあらゆる罪人の知るところとなり,「骨の髄まで悪党の札つきの犯罪人まで,ときどきこの将軍のことを思い出していた」.
「将軍老人」は,囚人達にどのような対応をしたのだろうか?その対応は,概略次のようなものであった.
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