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はじめに
学齢期の肢体不自由児のリハビリテーションは,普通校への統合教育指向と,肢体不自由養護学校(以下,養護学校)の義務制実施により,1970年代から大きな変化を遂げてきた.養護学校を含めて通学による学校教育が整った反面,とくに,普通校の肢体不自由児に対して,医学的リハビリテーションと教育との体系的・組織的な関わりの不十分な状態が現在まで続いている1).
横浜市では肢体不自由児の学校教育に関して,横浜市養護教育総合センターと横浜市立大学医学部リハビリテーション科が,以下の3点のような連携を保ってきた2).
1)1979年以来,横浜市立の全ての肢体不自由養護学校にリハビリテーション科医師を臨床指導医として定期的に派遣し,在籍している肢体不自由児を年2~3回の頻度で評価し,養護・訓練に対してリハビリテーション医学からの臨床指導を行ってきた.医療機関や肢体不自由児施設への併設校はなく,すべて単独設置校(現在5校)である.
2)就学指導ではリハビリテーション専門医が障害評価を行い,学校教育のうえで配慮が必要な能力障害について,医学的リハビリテーションの立場から助言してきた.
3)1984年から,普通校在籍の肢体不自由児に対して年1回(夏休み)のリハビリテーション医学検診を実施し,保護者と児童生徒および担任教師に対して医学的リハビリテーションによる指導を継続してきた.
横浜市の小中学校の児童生徒数は,毎年約8,000人ずつ減少し,1996年には約295,000人となっている.一方,横浜市の学齢の肢体不自由児童生徒数は,この5年間で約425名(0.124%)から約470名(0.156%)に増加している.普通校在籍の肢体不自由児童生徒数は約230名で大きな増減はないが,比率は0.065%から0.080%へ微増した(表1).主に,養護学校在籍の重度重複の障害児が増加した.江口ら3)による高知県の脳性麻痺児の調査でも,養護学校の脳性麻痺児は増加し,普通小学校では増減はないという報告と一致している.
こうした状況のなかで,1984年からの普通校の肢体不自由児のリハビリテーション医学検診では,受診者数が漸増し,1995年度の受診者は131名(受診率55%)に達した.1984年から1996年までの13年間の受診者数は延べ1,258名(通常学級81%,特殊学級19%)となった.なお,横浜市は肢体不自由特殊学級を設置していないため,特殊学級での教育が適当な肢体不自由児は精神薄弱特殊学級に在籍している.
本研究は,13年間の普通校の肢体不自由児のリハビリテーション医学検診を分析し,障害の経年的変化と学校生活への適応の変化を明らかにすることを目的とした.
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