Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
脳卒中の早期リハビリテーションの目的のひとつに,廃用症候群などの二次的障害の予防がある.しかし,早期よりリハビリテーションを実施した患者でさえ,入院後2週時までに非麻痺側の面積は5~20%減少し1),慢性期の入院リハビリテーション患者でも,通常の理学療法士(以下,PT)による訓練のみでは廃用が進行し,非麻痺側の筋力が,同世代の健常人に比して6~8割にすぎないことが報告されている2,3).それを防止するためには,PT,作業療法士(以下,OT)による訓練以外の時間をどのように過ごすかが問題になる4,5).
そこで,当院では数年前から脳卒中リハビリテーション患者を対象に,PT,OTによる訓練以外の時間帯での身体活動量を増やす目的で,患者や家族による訓練に取り組んできた1,6).その際,上田5)が指摘するように,訓練内容・方法,訓練量などが患者,家族任せでは,意欲や知識の程度により,過用・廃用・誤用症候を起こしうることに配慮して,訓練内容や方法,大まかな目標を指導し,安全性確保に努めてきた(以下,「指導下の自主訓練」).
ただし,脳卒中患者が目標とすべき1日歩行量については,われわれが検索し得た範囲では,大川ら7)が,「12grade片麻痺機能テストにて,下肢gradeが7以上であれば,ほとんどが1日一万歩以上歩行可能となる」と述べているなど,慢性期については散見されるものの7-9),今回の対象のような,早期よりリハビリテーションを行い,歩行量が増加している経過中の患者についての報告はみられなかった.したがって,1日に目標とする歩行指示量については,年齢,重症度,合併症の有無など多様な条件と,急速に延びる歩行可能距離を考慮して,われわれの経験にもとづき大まかに示すにとどまっていた.
そこで,脳卒中早期リハビリテーション患者の「指導下の自主訓練」において,安全で到達可能な1日歩行距雑を明らかにするために,1日歩行距離と,各種因子との関係について検討した.またその結果にもとづき,「指導下の自主歩行訓練」処方量の目安について実際的な知見が得られたので報告する.
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.