Japanese
English
特集 痛みへの対応
物理療法と運動療法
Physical Therapy and Thrapeutic Exercise for Pain Relief.
河野 博隆
1
,
中村 耕三
1
Hirotaka Kawano
1
,
Kozo Nakamura
1
1東京大学医学部整形外科学教室
1Department of Orthopedic Surgery, Faculty of Medicine, University of Tokyo
キーワード:
物理療法
,
運動療法
,
疼痛
Keyword:
物理療法
,
運動療法
,
疼痛
pp.727-731
発行日 1998年8月10日
Published Date 1998/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552108722
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はじめに
リハビリテーション医療の対象患者は,さまざまな障害に伴う慢性疼痛を合併していることが多い.疼痛の原因疾患の治療法としては薬物療法,手術療法,理学療法(物理療法,運動療法)などがあるが,疼痛管理においては,それぞれを単独で行うのではなく,心理学的アプローチを含めた集学的なアプローチが必要となる.
古くから治療を施すことを「手当てをする」という.疼痛箇所に手を当てて「押す」あるいは「さする」ことによって,疼痛が軽減することはよく知られていることである.頭痛があるときは頭部を押さえ,腹痛のあるときは腹部を押さえるのはこのためである.これは疼痛刺激を伝達する温痛覚路の興奮伝達が,触圧覚路の興奮によって抑制されるためと考えられている.
理学療法は最も古くから行われてきた治療法ともいえるが,科学技術の発達に伴って,医療の中心は薬物療法,手術療法に比重が移ってきた.しかし,薬物療法や手術療法と比べ,理学療法は疼痛を緩和するだけではなく,体力の維持・向上といった予防学的な側面からもQOLの改善に重要な役割を果たしているほか,簡便で非侵襲的であることやコストが低いことなどのさまざまな利点がある.癌性疼痛に苦しむ患者において,麻薬などによる疼痛コントロールが困難な場合でも,温熱療法などの物理療法によって疼痛が著しく軽減することもある.
ここでは,主に四肢,体幹の運動器に生じた疼痛に対する物理療法,運動療法の意義と適応について解説する.個々の治療法の手技についてはここでは触れない.
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