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はじめに
歩行障害における歩行杖の使用目的は,歩行杖の制動力,駆動力,支持力,バランス調整力などの力学的作用1)をもとに,歩行能力の向上を図ることである.ここでいう歩行能力2)とは,基礎的能力としての安定性,応用的能力としての速度性,持久性,障害性(階段,スロープ,凸凹道など),総合的能力としての実用性などに関する能力を意味している.
窪田3)は,評価の目的を分析型評価,判別型評価,予測型評価,設計型評価,判定型評価に分けているが,この分類を歩行杖の場合に当てはめてみると以下のようになる.
歩行杖の力学的作用機序に関する分析型評価4-6),歩行杖への依存度に関する判別型評価7),歩行杖の効果の予測に関する予測型評価,歩行杖の種類,仕様に関する設計型評価8),そして,歩行杖の効果に関する判定型評価である.
さて,日常の臨床の場で治療法の適応を決定することは,診断と治療を結びつける重要な過程として位置づけられる.この適応決定を,窪田9)は,「あるプログラムが目標の達成にとってどの程度効果があるかを予測し,プログラムの採否に関して何らかの判断基準をもとに意志決定を行うこと」と定義している.
このように歩行杖の適応決定には,歩行杖の力学的作用機序に関する分析型評価にもとづき,歩行杖の効果を予測する予測型評価と意志決定を助ける判断基準の設定が必要となる.一般的にいえば,歩行杖は対費用効果の高い歩行補助具であり,所持していれば安全であるという考え方もあって,その適応決定について改めて論じられることは少ないと思われる.しかし,歩行杖には設計仕様によっていくつかの種類があるため,それぞれについての適応を検討するとともに,一方で,杖を必要としない適応についても検討しておくことが必要である.
このような事柄を踏まえ,本研究では日常行われている歩行杖の適応が,どのような患者情報とその重みづけによって判断されているかを判別分析の手法を用いて分析し,この結果にもとづき,歩行杖の適応決定に関する判断基準について検討を行った.
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