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はじめに
福祉機器の水準をたかめるために,その基準化を進めることが,重要な課題であり,各方面の関係者によって努力が続けられているところであるが,現実的には工業規格として基準化されたものは,車いす,松葉杖12,13,14,33),電動車いす,義肢支持部材(現在審議中)等,数えるほどしかなく,基準化の難しさを物語っている.
一方,木製松葉杖のように工業規格が定められても,支給制度面における価格の配慮が十分でないために,規格製品が出廻らず,夢の規格に終ってしまっているようなものもあって,福祉機器の普及には複雑な問題が介在することがわかる.
松葉杖については,技術的な面の規格化9~11)が終了しており,制度の問題が残されているだけで,これは時間的に解決されることと予想し得るが,松葉杖よりさらに需要の多い歩行補助杖(1本杖)については,全くといってよい程基準化を指向した検討がなされていないのである.英国ではすでにこの基準化3,4)を1975年に終っているが,需要の点からわが国でもその必要性は大きいと考えられる.
歩行補助杖は現在木製と金属製(高分子材料のものもあるが一般的ではない)が主として出廻っているが,松葉杖の基準化の経験から,木製のものの基準化は,材料が均一でないことから非常に難しい14).一方,最近金属製のものが,木製に代って好まれるようになって来ており,この方は基準化は,比較的容易であろうと思われる.
杖基準化のための検討要素にどのような課題があるか,とくにそれを使用する人間とのかかわりについて,杖学という立場から,どのような情報が存在するのか,あるいは不足しているかについてまとめて紹介することにしたい.なお現在わが国で市販の金属性歩行補助杖についての調査も行ったが,これに関する報告は引続いてまとめる予定である.
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